気になる136 ◆フィンランドの伝説 : AcaCartelli◆


ヤヴァス!
この夏フィンランドのアカペラ界に事件が起こりそうですぜ!
フィンランドの伝説となること間違いなし、混15声ドリームアカペラ 「AcaCartelli」 !!
皆さんご存知、フィンランドを代表し、各ジャンルで世界最高峰のこの3グループが合体!
Rajaton - 混6声 Folk/Jazz →あかぺら村カテゴリー
Club For Five - 混5声 Pop/Jazz →あかぺら村カテゴリー
FORK - 混4声 Glam Rock →あかぺら村カテゴリー
「We're Not Gonna Take It」 それぞれの個性爆発!
FORK の REVOLUT!ON ツアーの持ち歌だ。
「Voulez-Vous」 Rajaton と FORK の練習風景!
Rajaton と m-pact が昔一緒に歌っていた曲だ (→動画記事はこちら)! Rajaton のアルバム 『Rajaton "Sings ABBA"』 に収録。
AcaCartelli は、今年の夏8月に音楽祭でコーンサートを行うようです!
↓以下、アカペラのフリーペーパー 『アカペラノオト 2016秋号』 の "聴こう☆地球アカペラ紀行" コーナー 「第3回:北欧フィンランド編」 に寄稿させていただいた内容を、改変してご紹介します。本気で書いたので、フィンランドのアカペラのエッセンスをざっと知るなら、このまとめをぜひ読んでね!
“森と湖の国”と呼ばれ、陸地の約7割が森林で、約19万にも及ぶといわれる湖沼が点在。亜寒帯であるものの四季もあり、自然との調和を重視する国。また、世界で最も高緯度に位置する国の1つで、国土の4分の1が北極圏に属し、半年間は雪に覆われ、オーロラや氷河湖もみられる。ムーミン、サンタクロース、サウナといった一般的なイメージから、高度な工芸デザイン、IT、キシリトール、教育先進国といった、最近ブームを巻き起こしている新イメージまで。ただ、まだ歴史は浅く若い国家といえる。地理的には、東はロシア・西はスウェーデンに挟まれた 「東と西の間」 の国。民族としてはフィン人のほか、アジア的な人種にも近いというトナカイの遊牧民サーミがいる。
フィンランドはまた“詩と歌の国”といわれる。今日非常に進んだ一流の音楽国で、オペラの分野でも国際的に注目されているという。また、夏にはたくさんの音楽フェスティバルが開かれる。民族的に忘れてならないのは、国歌とされるフィンランディアもつくった国民的作曲家 「シベリウス」 と、彼が素材にした伝説の叙事詩 「カレワラ」 の朗踊の5拍子(3+2)。そのほか、伝統の弦楽器 「カンテレ」、サーミの歌唱伝統 「ヨイク」、「フィドル」 の舞曲、叙情詩集 「カンテレタル」。この地域の“長い歌”は、しばしば伴奏がなく、合唱というよりは独唱、あるいはリフレインをつけて、人間の声を味わい、詩や物語に聴き入るタイプが多いという。さらにヨーロッパ一般には、古くから民族音楽と伝統音楽の交流があったし、今のフィンランドのポピュラー音楽界でも民族音楽が取り入れられている。それから、特記すべきもう一点。本場サンタクロースの国なだけあって、伝統的なクリスマスの楽曲に秀でている。
なぜだろう。
このような背景をもつフィンランドのアカペラ、とくにフィンランド語のものは、聴いていて親しみやすかったり、どこか落ち着いていて懐かしい気持ちになったりすることがある。その理由は3つあるかもしれない。
1つは、その言語自体にある。フィンランドの国家語はフィンランド語とスウェーデン語。フィンランド語は、その周辺の国々の言葉と異なる“ウラル語族”。英語やスウェーデン語のようなインド・ヨーロッパ語族とは全く異なる異質な言語だ。日本人にとって馴染みやすい発音といわれ、発音に占める母音の割合が多いし、ほとんどローマ字読みをすればよい。文法上の性質も仲間であるとか。
それから理由の2つ目としては、森と湖といった自然との調和・一体化がある。特に 「森」 が心の拠点で、「木」 が重要であるという点は日本に通ずるところがあり、自然豊かな視覚的な表象をも呼び起こす。
さらに第3に、日本とフィンランドの間の共通項として、多民族国家ではなく、島国的な辺境の小国であるということもある。フィンランド人は日本のことを“ナープリン・ナープリ (隣の隣)”と言うらしい。地図では遠く離れているようにみえても、実は心近い国なのかもしれない。
“アカペラグループ”はフィンランド語で “Lauluyhtye (ラウルイヒテエ)”という。フィンランドは、3つの異なるジャンルで世界屈指のアカペラグループを有している。フォークないしトラッドの 「Rajaton」、ポップやジャズの 「Club For Five」、エフェクト・グラムロックの 「FORK」。これらを含めて、注目すべき6つの Lauluyhtye を以下に紹介する。
① まずはレジェンド 「Rajaton (ラヤトン)」 から。
1997年結成の混6声だ。1882年に創設された名門シベリウス音楽院の出身メンバーもいる。民族音楽・伝統音楽と、現代音楽のポップスやロックなどとを融合したアカペラで、国内外でヒットしているほか、CARA (カラ) も複数受賞している。グループ名はフィンランド語で“boundless (バウンドレス) (無限の)”という意味だ。無限の広がりをみせるハーモニー、繊細で有機的な奥深さ、その北欧サウンドが今世界的にも注目を集めている。発表アルバムは15枚もある。その楽曲は、日本でも映画 『森聞き』 やCMなどに音源が使われている。なかでも彼らの 「Butterfly (バタフライ)」 は名曲中の名曲で、プロスケート選手がオリンピック演技に使用したこともあるのだ。日本へは、愛・地球博を含め何回か来日しているが、昨年11月のクリスマス・ツアーも最高だった。僕自身は2007年に韓国で初めて彼らの歌声を聴いた。この15年間、生のアカペラを聴いて本当に文字通り “鳥肌が立った”のは実は彼らの歌声に対してだけだったかもしれない。そのときの曲は 「Dobbin's Flowery Vale (ドヴィンの花咲く谷間)」 だった。そのほか、大自然を表現した極寒の 「Pakkanen (氷点下/氷小僧)」 や幻想的に揺らめく 「Aurora (オーロラ)」、上述の民族叙事詩カレワラに基づきカンテレも登場する 「Väinämöisen Veneretki (ヴァイナモイネンの舟旅)」 や、歌詞にサウナが登場する(!?)疫病の歌 「Surma (死)」 もおすすめ。まずは、CD付絵本 『ラヤトン 無限の森へ』 (2011年) と、DVD付の初の国内盤 『北欧の森の物語 (Nordic Forest Stories) (ノルディック・フォレスト・ストーリーズ)』 (2015年) を手に取ってみよう。一粒一粒の歌詞をじっくり味わえば、精錬された一流の歌声とフィンランドの文化や国民性が生み出す、静謐で深遠な世界が無限に広がるはずだ。ところで、ソプラノの Soila はカンテレを弾いたこともあるとか!
② 次に紹介したいグループは、
混5声 「Club For Five (クラブ・フォー・ファイブ)」。
これまたシベリウス音楽院等出身のメンバーたちで、結成は2001年、最近日本でも人気上昇中。やや現代ポップやジャズ寄りの、すっきりとしてクリアなレモンスカッシュのようなハーモニーと、安定のボトムパート、そして全メンバーの多彩な“声マネ (声帯模写)”。特に注目すべきメンバーは、人間離れした低音レンジをもつボーカルベース Tuukka (トゥッカ)、輝くキュートなハイソプラノの歌姫 Maija (マイヤ)、器用で多彩な“サウンド・ボックス” のテナー Jouni (ヨウニ)。まず、Tuukka は世界最高峰のベースの1人といっていいかもしれない。いや、 ”世界最低” か?ベースリード曲 「Brothers In Arms (ブラザーズ・イン・アームズ)」 や 「Suru (悲しみ)」 のほか、彼の超絶技巧が楽しめる曲 「Sassy (サッシー)」 では、なんと LowLow Eb (ロー・ロー・イーフラット) まで出している! 一方でソプラノの Maija は、その愛らしい声でフィンランドのアニメ界でも活躍しているとか!また、テナー&アレンジ担当の Jouni は、一般的な楽器だけでなく、尺八や二胡の声マネもできる!Club For Five の曲の中では、軽快なポップス 「Jäätelökesä (アイスクリーム・サマー)」、フィンランド語の美しい 「Mun Iahjani (私の贈り物)」、ループを用いた 「Running Up That Hill (ランニング・アップ・ザット・ヒル)」 などがとても好き。彼らのライブDVD 『In Concert - You're The Voice (イン・コンサート - ユーアー・ザ・ボイス)』は必携。また、2015年発表のCARA受賞最新アルバム 『Ennen Tätä Hetkeä (この瞬間の前に)』 は、今一番のお気に入り!CDジャケットやMVからして“フィンランドの森”づくし。そのサウンドからも、フィンランドの心の拠り所、どこまでもつづく森と湖の心象風景を余すところなく堪能できる。
③ そして混4声 「FORK (フォーク)」。
1996年、お金と才能がなくて楽器でロックはできなかったけれど、歌や演技は上手かったからアカペラを始めた。そんなフォークのように尖った4人の異色異端児の、クレイジーで過激な“エレクトロ・ボーカル・サーカス”や“ピンクノイズ”は、とにかくド派手。華美で妖艶な衣装と、時には本物の火を噴く舞台セット(!)とダンス・ステージング、そしてユーモアで観客を巻き込む。フィンランドではハノイ・ロックスという有名バンドがいた“グラムロック (Glam Rock)”と呼ばれる音楽ジャンルなのだろうか。ちなみに現代フィンランドではロックやヘヴィメタルがとても人気。FORK はまた、最近アカペラ界でどんどん流行しているループマシン (ルーパー) やエフェクターを、流行前の初期の段階からガンガン使っていた先駆的グループでもある。エフェクト声ギターが最高。2015年、デビュー10周年を記念したショーを収録したDVD 『X-Live (エックス・ライブ)』をリリース。スタイル抜群のアルト Mia (ミア) の男顔負けのパワーリード。これまたスタイルがモデル並みのベースパーカスの Kasper (カスペル) は元警察官。彼らの曲では、迫力の 「Always On the Run (オールウェイズ・オン・ザ・ラン)」、オリジナル 「My Sin (マイ・シン)」 がよい。2015年、世界最大級のヘヴィメタルの祭典 Wacken Open Air (ヴァッケン・オープン・エア) にも出演!
④ 若手一番の期待は 「Kumo (クモ)」、2012年活動開始。
ヘルシンキの美しきロマン。メンバー5人のうち4人が、Rajaton の後輩にあたるシベリウス音楽院出身で、残る1人のベースは医者。Rajaton の後継となりうるポテンシャルを秘めている。オリジナルソング 「Sinun (あなたの)」は必聴。慎ましく静かな声色。ゆったりと美しく、北欧の情景豊かな響きが心地好く流れる。2015年にはクリスマスシングル 「Tonttu (トントゥ) (クリスマスの妖精)」を発表した。“暗闇の中のコンサート (Concerts in the dark(コンサーツ・イン・ザ・ダーク)”と称した珍しい試みもしている。2016年夏あたりにデビューアルバムが出るかもしれない。
⑤ 女性のみの5人グループ 「Viisi (ヴィーシ)」 も紹介したい。
グループ名はフィンランド語で数の“5”を意味。彼女たちのハーモニーは、限りなく透明で澄んだ声色。「Mina sinua rakastan (私はあなたを愛しています)」 という曲をはじめとして、デビューアルバム 『Viisi (ヴィーシ)』 やクリスマスアルバム 『Joulun Lauluja (クリスマスの歌)』 の収録曲が最高に綺麗だ。
⑥ そして今アカペラ界隈を盛り上げているのは、前述の Rajaton が、隣国スウェーデンの伝説的アカペラグループ The Real Group (ザ・リアル・グループ) のメンバーと2013年に結成した、圧巻の混11声 「LEVELELEVEN (レベルイレブン)」 だ。北欧アカペラの新たな伝説が始まっている。
夏が来る。
フィンランド人にとっては、暖かいお祝いの季節。沈まない真夜中の太陽-白夜-を楽しみ、「kesämökki (ケサモッキ) (夏の住家/サマーコテージ)」 に憩う季節。一方、多くの日本人にとっては夏バテの季節。うんざりしてしまいそうなときは、“森と湖の国”そして“詩と歌の国”であるフィンランドのアカペラを聴こう☆ 豊かな森のように優しいけれど凛とした、美しいハーモニー、親しみの湧くことばの響き、そして物語性のある詩に、北欧ロマンを感じて涼をとりたい。
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