あの頃のアカペラ特集: 其ノ一
アカペラをこよなく愛する私達、キリック&のぶらすがお届けします。
の: それでは、簡単な自己紹介から始めたいと思います。
まずは僕(のぶらす)から。アカペラリスナー暦は10年、プレイヤー経験は3年くらいです。三度の飯よりアカペラってな感じで、アカペラを聴かないと毎日が始まらない重度のアカペラバカです。アカペラとの出会いは2001年、ずばり "ハモネプ" 初回放送。おっくんのボイパに衝撃を受けてコンテンポラリーアカペラというスタイルに興味を持ち始めました。同年にアメリカの世界最高峰のアカペラグループ 「m-pact」 がゲストとして番組に出演し、海外勢のレベルの高さに唖然とし、世界のアカペラに興味を持つようになりました。それ以来、自力で海外のアカペラ情報を集めて比較したり、色々な海外アカペラグループのコンサートを見に行ったりして楽しんできました。僕は特に1990年代以前のアカペラの知識について浅いので、今回キリックさんにお話を伺えることを楽しみにしています。
キ: キリックです。多分、DNAの塩基配列がア・カ・ペ・ラになっているんじゃないかと思えるくらいのアカペラ・フリークです。霞食べて生きている仙人の如く、アカペラを糧に生きています。リスナー暦28年、CD収集暦22年です。学生時代は周りにアカペラを知る人も殆どおらず、社会人になってからは転勤や海外勤務のためグループを組むタイミングもなく、プレイヤー暦はございません。
の: A・T・G・C ならぬ、ア・カ・ぺ・ラですか(笑)間違いなく僕にもその遺伝子が組み込まれていると思われます。それにしてもリスナー暦28年は凄まじいですね!そんなキリックさんとアカペラの出会いのエピソードについて詳しく教えて下さい。
キ: 中学生の頃ですが、貯金をはたいて買ったステレオで、毎晩FMで "エアーチェック" をして音楽を聴きあさっていました。この頃はラッツ&スターの前身、シャネルズが全盛の時代ということもあって、専ら Doo Wop やオールディーズを聴いていました。そして1983年のある晩、山下達郎さんがホストでオールディーズの曲を紹介する番組 「サウンド・ストリート」 を聴いていて、衝撃的な曲に出会ったのです。その曲こそ……って情けない話ですが、ものすごい衝撃を受けておきながら思い出せないのです。アカペラの曲だったのは確かなのですが。後で分ったことは、まぎれもなく Jerry Lawson のハスキーボイスだったこと、そうです、「The Persuasions」 の曲だったのです。ノリのいいソウルフルな曲を、楽器伴奏もなくリードとコーラスだけで歌いきってしまうパワーに圧倒され、そのハーモニーの心地よさに心奪われました。(1983年は、奇しくも 「The Flying Pickets」 の "Only You" が欧州で大ヒットした年でした。当時はそんなことつゆ知らず…)
それからというもの、“ハーモニーホリック”状態で、勉強もせずひたすらコーラス、ハーモニーをキーワードにFMを聴きあさっていました。そんな私を見かねた神様が紹介して下さった(のだと信じています)のが 「The Nylons」 でした。Tokens のカバーでビルボード3週間連続1位を記録した曲、"The Lion Sleeps Tonight" をアカペラでカバーし、それまでアカペラを知らない人でも、"アカペラ=Nylons" というくらいアカペラの認知度アップに貢献したグループでした。彼らのハーモニーは間違いなく多くの人を魅了し、そして現在に至る私のアカペラ人生を決定付けることになりました。1985年に日本でリリースされたCD "Seamless" は、当時貧乏高校生だった私には手の届かない価格でした(\3,200)ので、お金持ちの友人に買ってもらい、それをカセットにダビングしてもらって聴いていました。う~ん、懐かしい。
の: The Persuasions や The Nylons との出会いが、キリックさんのアカペラ人生の始まりだったのですね。The Persuasion の Jerry Lawson といえば、昨年のアメリカ版ハモネプこと "The Sing-Off シーズン2" で登場し、私もそのハスキーボイスに魅せられました。そんなグループとキリックさんを結びつけた山下達郎さんは日本の "一人アカペラ" の開祖としても有名ですが、やはり最高に偉大だと思います。ところで、その当時のアカペラ界はどのような状況でしたか?
キ: 80年代前半というのは、ディスコ・ミュージックやロックが全盛だったので、"アカペラ界" と呼べるほどアカペラの認知度はなかったと思います。あくまでも個人的な見解ですが、日本のアカペラ発展史をみてみると、有史以前の1962年に米国で 「The Persuasions」、仏国で 「The Swingle Singers」 が誕生、1964年に南アで 「Ladysmith Black Mambazo」、1968年に英国で 「The King's Singers」 が誕生、そして1978年にカナダで 「The Nylons」 が活動を始めた頃から日本でもアカペラが知られるようになり、その後1982年に 「The Flying Pickets」、1984年に 「The Real Group」、1986年に 「Rockapella」、1987年に 「Take 6」、1988年に 「Vox One」 と世界各地でアカペラグループが誕生した頃から、日本でもにわかにアカペラの人気が出てきたと思います。特に Rockapella については、Scott の日本好きと幾見大先生の卓越したプロデュースが奏功して、90年代初めには、日本に第一次アカペラ・ブームを巻き起こしました。
の: 1960年代から既に世界では "コンテンポラリー・アカペラ (現代的アカペラ)" の萌芽が生まれていたのですね。日本にその種が伝播し開花するにはそれから20年の歳月が必要だったということですか。挙げてくださったいずれのグループも、今ではもはや "伝説" ともいうべき尊敬すべきグループとして、斯界では磐石の地位を確立していますね。その他にも1970年代に活躍したアメリカの 「The Singers Unlimited」、日本のアカペラの草分けとして外せないのが1968年結成の 「タイムファイブ」、ゴスペラーズに影響を与えたという1979年結成の 「スターダストレビュー」 も偉大な存在でした。
の: 今回はアカペラの黎明と出会いについてお聞きしました。次回は、主に日本の第一次アカペラ・ブームについて、そのブームを支えたアカペラグループを絡めてお話を伺えればと思います。ありがとうございました。
最後に、今回の話題に登場した黎明期アカペラグループの懐かしの映像をご覧下さい。
The Persuations // Up on the Roof
http://www.youtube.com/watch?v=E-n3jEQlwQ8
The Nylons // The Lion Sleeps Tonight
http://www.youtube.com/watch?v=hi4XmAbA7JU
The Nylons // Bop 'til You Drop
http://www.youtube.com/watch?v=W1AQbY6lRiU
The Swingle Singers // Tchaikovsky's 1812 Overture
http://www.youtube.com/watch?v=8lZ5Yez0Hec
The King's Singers // Barber of Seville Overture
http://www.youtube.com/watch?v=Oio1G-7aopo
The Real Group // There Will Never Be Another You
http://www.youtube.com/watch?v=6YMxQNAmQaI
The Flying Pickets // Only You
http://www.youtube.com/watch?v=qgDKtLPp46s
The Ladysmith Black Mambazo
http://www.youtube.com/watch?v=laIPbYn3yK8
Take 6 // Get Away Jordan
http://www.youtube.com/watch?v=j9DyDEkXQJs
Take 6 // Mary
http://www.youtube.com/watch?v=U_7yBFovdtE
The Singers Unlimited // Here, There and Everywhere
http://www.youtube.com/watch?v=yHjI1_z8FsA
タイムファイブ (Time Five) // 北の宿から, セーラー服を脱がさないで
http://www.youtube.com/watch?v=lx4zhzoCM9E
あの頃のアカペラ 特集
世界に誇るアカペラ CDコレクター 「あかぺら村のCD博士キリックさん」 をお招きして、コンテンポラリーアカペラの黎明期から現在に至るまでの歴史が垣間見える対談をお送りしたいと思います。
ゆるり更新していきますのでよろしくお願いします (^_^)
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